エイス基礎知識 
河内 和泉 著書
スクエアエニックス 出版
全 16巻 完結
あらすじ
主人公「ナオヤ」はアメリカで多岐の分野を研究する「エイス研究所」の警備員(ガード)である。
ある日叔父であるエイス研究所の所長に頼まれた仕事で「時間を早める」能力をもつ少女「セルシア」を保護する。
彼女の人権と自由を得るため動くナオヤはそれまで知らなかった「研究」と「研究者」そして「研究を巡る争い」の世界に身を投じて知っていく。
魅力
①世界感と設定がしっかり考えられている
作品の舞台は現代の研究なだけ有ってしっかりと下調べがされている。
一時日本でも「IPA細胞」の話題で盛り上がった事が有ったがサイボーグ並みの健康な体に生まれた私にとって全く興味の向かない内容で有ったが為、見向きもしませんでした。
エイスでは遺伝子工学が主な題材とされていて、主人公のナオヤがただかっこよくアクション、女の子を助ける背景には色んな遺伝子研究の問題が有りました。
全く遺伝子に興味のない私でもわかるような説明、「なぜ必要とされているか」の具体的な例。そしてその研究内容が認められて実装されるまでの困難と闘い。
この題材を漫画にするにあたってとても多くの下準備が有ったことが容易に考えられます。
②登場人物がかっこいいい
もちろん見た目も有りますが何より心のありよう、考え方が皆かっこいいんです。
私は「研究者」とは「研究」がしたいだけの「知識欲の塊」のように思っていました。けれどこの作品を読んでその途方もない労力の根源には「困っている人を助けたい」という思いが有ることを知りました。
ナオヤがガードそして肉弾で戦い、研究所は研究内容で戦う。
その姿がとってもかっこいいです。
③女の子のキャラが魅力的
この作品には圧倒的に女性キャラが多く登場しますが皆それぞれに魅力的です。
ただ容姿が良いだけではなく、自分の考えに芯があって、そのために動く。
自分の行動一つ一つが「なんとなく」ではなく、ちゃんと自分なりの「考え」がある心の強い女性が多いです
エイス研所長の言葉ですが、
「女と男では性染色体の形も違うが中身も違う。男の方が短いし、中の遺伝子は少ないエラーが起きてもフォロー(とっかえ)が効かない。だから女の方がエラーに強いし男とは全く別の生き物だと思っている。」
この言葉は性染色体の話で体の丈夫さの話ですが、この話をすることで女性は心も強いんだという意味も含めています。
よく女性は「感情で考える生き物」だとか「か弱い」「社会的弱者」だから男が守ってあげなければいけないという考え方が多いですが、この漫画ではそうではなく、女性だからこその強さに尊敬の意を持っているように思います。
④絵がうまい
河内先生の書くキャラは男性も女性もとっても魅力的ですし、背景や小道具の書き込みもちゃんとされていてとても好きです。
ただキャラが意見交換で談笑しているだけのシーンも戦闘のシーンもどっちも見ごたえが有って、このシーンつまんないからとばしちゃおと言うのが有りません。
難しい題材を使用するときどうしても説明的になってしまい、物語の進行上特にちゃんと読んで理解してなくてもいいようなセリフは読まないことも有りますが、エイスは説明が単調ではないので全てのセリフに目を通したくなります。
逆を言えば全てのセリフ、説明に意味が有るので読まないと言う選択肢が有りません。
ちょっと内容の確認の為にパラパラ読みをするつもり出たのに結局しっかり読み込んでしまい、あまつさえ1巻から全部読み返したくなってしまいます。
まとめ
私は河内先生の作風が好きなので発売されている単行本は全て揃えていますが、一つだけ納得できない点が有ります。
それは「なぜアニメ化されないのか」です。
私的にはめっちゃ好きなので色んな人にお勧めしますが誰も作品を知らないという程マイナー扱いされているのが納得できません。
話もしっかり作りこまれていて、絵もよくて、変に「異世界転生もの」で今の流行でアニメ化されている作品よりもずっとたくさんの人の目に付くべきなのに、特に宣伝もされていなくて、私自身も母が買っていた「月間ガンガン」で前作の「エンチャンター」の連載を見ていなければ知ることは無かったと思います。
私が本屋だったらがん押しするのに・・・!!
本当に大好きな作品なので完結してしまった事は寂しいですが、私好みの皆ハッピーエンドでしたので感無量です。
完結したのももう何年も前の事ですので今ならブックオフで全巻100円の棚に有ると思います。
私のオススメを読んで興味の出た方は大人買いして下さい。
そして河内先生の次回作を新刊で買って、周りに勧めて下さい。
ちなみに蛇足ですが、河内先生の女性キャラがエロ可愛いから先生は勝手に男性だと思っていたら女性でびっくりしました。
「鋼の錬金術師」の荒川先生が女性だと知った時と同じくらいの衝撃でした。
